ジブンヲウシナウアノヒノキオク
「居場所を、探してるんだ」
呟くように話す少年は、全てが「白」くて、今にも消えてしまいそうなほど華奢だった。
髪の毛も、肌の色も、眼の色も、服装も、何もかもが白い。
名前は、世依(せい)。
「ねえ、」
誰かに呼びかけるように尋ねるが、誰も返事はしない。
それどころか、世依のいる場所は物音一つしなかったのだ。
「ね、え、」
少し途切れながらも、世依は再び呼びかけた。
勿論、返事なんて無かった、
世依は真っ黒い空間の中心に立っていた。
いや、全てが闇に包まれていて、どこが中心なのか分からない。
永遠に、世依は誰かを求めてここに居る。
そういう、運命、なのだ。
「僕は・・・・・・」
一息置いて、息を吸っても、彼は力強い声なんて出ない。
「君のいない世界には、居たくなかったんだ」
一筋の涙が流れる。
「でも、こんな世界は、君が居ない世界よりも、嫌だよ」
世依には、大事に想っている少女が居た。
葉鶴(はづる)、それがその少女の名前。
幼馴染ぐらいとまではいかないが、いつも一緒にいるのを同年代の男子達にからかわれても、二人で穏やかな微笑みを返すくらい、仲が良かった。
幸せは長く続かない事なんて、世依はわかっていた。
でも。
「・・・・・・こんなに、酷い事は、しなくても・・・いいんじゃ、ないのかな」
涙が地面に落ちるように、ぽつり、と言葉を紡ぐ。
小さい頃から持病を患っていたという葉鶴は、世依の誕生日の前日にこの世を去った。
確かに世依は、葉鶴が居ない世界で自分ひとり生きるくらいなら消えた方がマシだと言った。
願った瞬間に、辺りに光が降り注ぎ、世依は意識を失い、次に目を開いた時には、この、何も無い空間に一人、立っていたのだ。
死んだ方がマシ、とは、言わなかったから。
自分は今現在、ここに生きている。
ここに。
この空間に。
自分が生きていた世界に、自分は居ない。
死んではいない。
失踪したと、誰もが言った。
『昔から不思議な子供だったし』『おかしな事を口走っていた気がする』と、理由をつけて。
世依の居る空間は、今まで世依が生きてきた世界を見る事が出来ない。
死後の世界でもないから、葉鶴の姿さえ見えない。
ひとり、という響きがこんなに寂しいものだとは思わなかった、と世依は感じた。
居場所なんて無い。
この空間に自分は一人なんだ、と。
言い聞かせると余計、寂しさが増えていく。
過去も、今も、未来も。
ずっと。
「僕は、・・・・・・ここで、過ごすのか」